竣工の時点では、一億円の借入残高に対し、建物の相続税評価額は約六〇〇〇万円。つまり差額の四〇〇〇万円が債務控除として相続効果をもたらしています。地主さんにとって、この金額はたしかに魅力的なものに映るでしょう。問題はそのあとです。債務控除の効果は時間の経過とともに徐々に薄れ、一九年目の時点で「ゼロ」になっています。築後一九年の建物といえば老朽化が進み、その間、水回りや外装などのメンテナンスにも相当額の支出を強いられているはずです。
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それでも新築のようなわけにはいかず、空き室が出れば収入も下がります。ちょうどそのころ、債務控除による相続効果は消えてなくなってしまうわけです。しかも、一九年目を境に借入残高と建物の相続税評価額は逆転。以後、相続税の課税価額は上がってしまうという皮肉な結果が待っています。これが何を意味しているか、もうおわかりでしょう。この対策には、ご当主が長生きすればするほど相続効果が薄れ、目論見が外れると、かえって相続税が高いものにつきかねないというカラクリが潜んでいるのです。あからさまな表現をお許しいただくなら、メリットを存分に享受するには、ご当主に長生きされては困るわけです。悪意があって仕組まれたものではないにせよ、行きつく先に変わりはありません。これを「愛のない相続対策」といわずして、何と呼ぶべきでしょうか。