きれいな形の耳に小さな光る石のピアス。手首にも、同じ石の連なった華奢なブレスレッドをしている。エナメルの腫の低いオープンパンプスをはいた細い足首が、彼女の若さを物語っていた。ヨーロッパのオペラハウスにふさわしいおしゃれとは、こういうことなのね、と納得する。パーティーほどは華美にせず、けれど地味すぎてもいけない。上演されるものの内容にも合っていなければならない。「レクイエム」なら、ドレスコードは黒、そう頭ではわかっていても、具体的になにをどう着ればよいのか想像がつかないほど難しく思える。たとえチケットが手に入らなくても、人々のドレスアップを見ることができるだけで嬉しい、とすっかり満足した気分になっていた。マントの女性は、同じ車から降りた母親らしき毛皮のマダムとタキシードの初老の紳士とともに、あっと思う間もなく扉の中に入って行った。